「登山でどれくらい水を持っていけば安全か」「行動時間や体重で必要量はどう変わるのか」といった心配がある方もいると思います。
この記事では、脱水量や給水量の基本となる計算式から、季節や装備、携行方法による水分量の調整、さらには塩分や電解質の補給を含めた水分補給全体の考え方まで、山歩きに必要な水の計画をわかりやすく解説します。これを読んでおけば「本当に水が足りるか不安」という状態を減らせるはずです。
登山での水分量の計算の基本
登山での水の携行量を考えるとき、まずは基本となる水分消失と必要量の考え方を理解することが重要です。この章では脱水量の計算式と給水量の目安について見ていきます。

脱水量の計算式と係数5
登山中に体からどれだけの水が失われるかを見積もるために、よく使われる式があります。
脱水量(ml)=体重(kg)×行動時間(h)×5
この「5」という数字は、標準的な登山道を、標準的な装備で、標準的なペースで歩いたときの平均的な水分消失量の目安として設定されています。たとえば体重60kgで6時間行動した場合、60kg×6時間×5=1800ml。これが「大まかに失われる水分量」の目安です。
ただし、この数式はあくまで平均的な条件を想定したもの。汗のかきやすさ、気温、荷物の重さ、歩く強度などで、失う水分量は変動します。あくまでベースとして考え、自分の経験やその日の条件で調整するのがおすすめです。
給水量の目安と補正率
脱水量が分かったら、その70〜80%を給水量の目安にするのが一般的です。たとえば、先の例の1800mlなら、給水量は約1260〜1440ml。余裕を見てこの範囲を目安にすると安全性が高まります。
ただしこれはあくまで基本。暑い季節、強い日差し、高標高、重い荷物など条件が変わると、必要な水分量はさらに増える可能性があります。常に「少し余裕を持って」水を携行することを意識しましょう。

塩分補給とスポーツドリンク
水だけを大量に飲んでいると、汗で失われたナトリウムやカリウムなどの電解質が足りず、体液のバランスが崩れることがあります。これは脱水だけでなく、「運動誘発性低ナトリウム血症」の原因になることもあるので注意が必要です。
特に長時間の行動や暑い季節の登山では、スポーツドリンクや塩タブレット、梅干しなどで塩分・電解質を補給するのがおすすめです。ただし、どれだけ必要かは汗の量や体質で変わるので、「目安として水分量の約8割を狙う」「塩分も同時に補う」などバランスを意識してください。

登山の水計算と携行方法
必要な水分量が見えてきたら、次は「どのように携行し」「いつ」「どのように補給するか」を考えます。この章では携行方法の選択肢と、水分だけでなく塩分や電解質補給も含めた実践的な水計画を紹介します。
ハイドレーションとボトル比較
水を携行する方法として定番なのが、ハイドレーションパック(給水バッグ)とボトル(ペットボトルやナルゲンなど)です。ハイドレーションパックは歩きながらチューブで給水できるので、こまめな補給がしやすく、登山ではとても便利です。
一方、ボトルは残量が目に見えて管理しやすく、水以外の用途(料理、手洗いなど)にも使える万能選手。どちらが良いかは、行程や季節、携行水量、荷物量に応じて選ぶのがいいと思います。
さらに、両方を組み合わせて使うのも賢いやり方。たとえばハイドレーションで行動中に少しずつ飲みつつ、ボトルに入れた水を予備として携帯することで、安心感が高まります。

水分の携行方法やボトルの使い分けについては、当サイトの「登山でペットボトルはダメじゃない!賢い水分管理のポイント」という記事でも詳しく解説しています。興味があれば併せて読んでみてください。
浄水器や水場利用の注意点
もし登山ルートに沢水や湧水など「水場」がある場合、水をすべて携行するのではなく、必要な分+予備を持っておき、水場で補給するのも手です。ただし自然水は浄水器や煮沸、あるいは浄水タブレットなどで安全を確保する必要がある場合もあります。
浄水できる装備を持つことで、携行する水の量を減らせるので荷物が軽くなるメリットがあります。ただし「必ず水がある」と保証されているわけではないので、あくまで予備を持つ「安全な保険」と考えてください。
冬山の保温とチューブ凍結対策
寒い季節の登山や高標高では、気温が低く空気が乾燥することで、水分は汗だけでなく呼吸でも失われやすくなります。また、ハイドレーションのチューブが凍ってしまい給水できなくなる場合もあります。
そのため、冬山では保温ボトルに白湯やお茶、スープなどを入れておくと便利です。さらに、ハイドレーションを使う場合はチューブに保温カバーを付けるなどの対策が必要です。
装備と荷物量を考慮した水分量の調整
例えば、装備を含めた重さで「荷物+体重」を基に脱水量を考える方法もあります。また、長時間の縦走や水場がないルートでは、予備を含めて余裕を持った水分を携行するのが安心です。
水は重く、特に大量に持つとザックが重くなりがちです。だからこそ、体重だけでなく装備やギアの重さも「荷物全体としての負荷」を考えて、水分量を調整することが大切です。

登山前後と行動中の水分補給タイミング
ただ水を持っていくだけでは不十分。いつ、どのように水分補給するかも非常に重要です。ここでは、登山前後と行動中の効果的な水補給タイミングを解説します。
登山前日や出発前に水分をある程度取っておく「事前の給水」は、登山開始直後の脱水を防ぐ意味で有効です。朝食時や登山直前にコップ1〜2杯(200〜400ml程度)の水分を摂っておくといいでしょう。
行動中は「渇いたと感じる前」に、こまめに少量ずつ飲むのが基本。たとえば30〜60分ごとの小休憩時に100〜200ml、喉が渇き始めたら1〜2口(20〜40ml)ずつといった補給がおすすめです。
休憩中や昼食時などまとめて飲むタイミングも大切ですが、飲み過ぎず、塩分補給とのバランスを意識してください。帰着後にも水分と塩分を適度に補って、体を回復させることも忘れずに。
まとめ: 登山で計算を活かした安心な水分計画
登山での水の携行量は、体重・行動時間をもとに脱水量を計算し、給水量の目安を出すことで合理的に見積もることができます。とはいえそれだけで安全が保証されるわけではなく、天候や装備、標高、体質などで必要量が変わるので、常に余裕を持つことが大切です。
携行方法、塩分補給、飲むタイミングなどを考慮して、水分と電解質のバランスを整えることで、脱水や低ナトリウム血症などのリスクを減らして安全な山歩きができます。
登山は楽しい時間を過ごすためのもの。だからこそ、水分計画は慎重かつ柔軟に。今回紹介した登山での水分計算の方法や補給の考え方が、あなたの安全で快適な登山ライフの助けになれば嬉しいです。
登山を計画する際は、今回の情報を参考にしつつ、天候や体調、同行メンバーの状況などを総合して判断してください。

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